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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜

片岡が案内したレストランは、マレーシア人が経営する本格的なマレーシア料理の店だった。
こじんまりした店だが、厨房や店内ではマレー語が飛び交う異国情緒に満ち溢れたエキゾチックな店だ。
嗅いだことがない香辛料の香りが漂い、厨房からは活気に満ち溢れた料理人の声と共に料理の良い匂いがした。
「好き嫌いはない?」
「はい。大丈夫です」
海老とハーブたっぷりのナシゴレン、サンバルソースで食べる海南ライス、ココナッツミルクで煮たラクサカレー、香ばしい焼き鳥サテー、柔らかな殻の蟹を揚げたソフトシェルクラブ…。
片岡がオーダーした料理は全て美味しかった。
「すごく美味しいです。
…マレーシア料理て初めて食べました。全然辛くないんですね」
眼を輝かせて喜ぶ澄佳に片岡は眼を細める。
手慣れた様子で料理を取り分けてやりながら、説明する。
「マレーシアは多民族国家だからね。マレー系、インド系、中国系の人々がいて食文化はそれぞれだけれど、混ざり合って新しいものも生まれているんだ。
マレー系や中国系の料理は辛くはないし、どこか懐かしい日本人の味覚に合う料理もたくさんあるんだよ」
「…へえ…」
「君が作ったナシゴレンもとても美味かったけれど、本格的な味を知っておくのは良いことだからね」
…一見冷たそうで傲慢に見えるが、こんな風なアドバイスはとても親切で細やかだ。
「…ありがとうございます…」
澄佳は小さく頭を下げた。
「え?」
怪訝そうな貌をする片岡に、恥ずかしそうに微笑む。
「わざわざこんな素敵なお店に連れてきてくれて…。
私、あの町を出たことがないんです。
…高校生の時に両親が亡くなって祖母と暮らし始めて…。
祖母の店を手伝いたくて高校を出たら専門学校に入って、今年の3月に卒業しました。
…卒業記念に友達と東京タワーを見に行って…原宿とディズニーシーに行って…。
それ以来、あの町を出たことはありません。
毎日忙しくて…祖母は大好きだし充実しているけど…。
…時々ふっと、このままずっとあの小さな海の町で暮らして…歳を取っていくのかな…て。
嫌ではないけれど…たまにすごく息苦しくなることがあったんです」
「……」
…だから…と、澄佳は改めて片岡を見つめて、微かに微笑った。
「…今日はありがとうございました…」
こじんまりした店だが、厨房や店内ではマレー語が飛び交う異国情緒に満ち溢れたエキゾチックな店だ。
嗅いだことがない香辛料の香りが漂い、厨房からは活気に満ち溢れた料理人の声と共に料理の良い匂いがした。
「好き嫌いはない?」
「はい。大丈夫です」
海老とハーブたっぷりのナシゴレン、サンバルソースで食べる海南ライス、ココナッツミルクで煮たラクサカレー、香ばしい焼き鳥サテー、柔らかな殻の蟹を揚げたソフトシェルクラブ…。
片岡がオーダーした料理は全て美味しかった。
「すごく美味しいです。
…マレーシア料理て初めて食べました。全然辛くないんですね」
眼を輝かせて喜ぶ澄佳に片岡は眼を細める。
手慣れた様子で料理を取り分けてやりながら、説明する。
「マレーシアは多民族国家だからね。マレー系、インド系、中国系の人々がいて食文化はそれぞれだけれど、混ざり合って新しいものも生まれているんだ。
マレー系や中国系の料理は辛くはないし、どこか懐かしい日本人の味覚に合う料理もたくさんあるんだよ」
「…へえ…」
「君が作ったナシゴレンもとても美味かったけれど、本格的な味を知っておくのは良いことだからね」
…一見冷たそうで傲慢に見えるが、こんな風なアドバイスはとても親切で細やかだ。
「…ありがとうございます…」
澄佳は小さく頭を下げた。
「え?」
怪訝そうな貌をする片岡に、恥ずかしそうに微笑む。
「わざわざこんな素敵なお店に連れてきてくれて…。
私、あの町を出たことがないんです。
…高校生の時に両親が亡くなって祖母と暮らし始めて…。
祖母の店を手伝いたくて高校を出たら専門学校に入って、今年の3月に卒業しました。
…卒業記念に友達と東京タワーを見に行って…原宿とディズニーシーに行って…。
それ以来、あの町を出たことはありません。
毎日忙しくて…祖母は大好きだし充実しているけど…。
…時々ふっと、このままずっとあの小さな海の町で暮らして…歳を取っていくのかな…て。
嫌ではないけれど…たまにすごく息苦しくなることがあったんです」
「……」
…だから…と、澄佳は改めて片岡を見つめて、微かに微笑った。
「…今日はありがとうございました…」

