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歳下の悪魔
第3章  新たな顔


 目の前のカップに、コーヒーが注がれる。
「コーヒーで良かった? 紅茶もあるけど?」
「朝はいつも、コーヒーだから。ありがとう……」
 呼び捨てのままでも、和真は会社でと似たような雰囲気になっている。
 昨夜は、あんなに卑劣だったのに。
 それに、他人のセックスを見たのも初めて。アダルトビデオのようにちょっとしたストーリーも無く、普通の恋人同士がしていた。ある意味、その方がリアルかもしれない。
「優華の元彼って、どういう人?」
「え……」
 美味しいコーヒーでの穏やかな時を破ったのは、和真からの質問。
「どういうって……。商社に勤めてて、身長も体型も普通で……」
「俺と、どっちがイケメンだった?」
 私は黙ってしまった。
「合コンで会ったのは、美月さんから聞いたけど?」
 考えてみると、元彼にはこれといって説明する特徴はない。優しくて、一緒にいて楽しかったというだけ。それは、相性もあるだろう。
 それなのに、7年も付き合って捨てられた。お互い合意で、別れたわけじゃない。私は彼と結婚して、転勤先で暮らすつもりだった。
 仕事も今までのスキルがあれば、どこかに転職出来るだろう。そして子供が出来て、家族になっていく。それは全て、私だけが考えていたことだった。
「ごめん。興味があった、だけだから。優華の付き合ってた奴に……」
 私の表情が曇ったのを、感じたのだろう。謝ってから和真は、自分のカップにコーヒーのお替りを注いだ。
「俺は、俺だから……」
 意味が分からなかった。
 確かに、世の中に全く同じ人はいない。似ているとしても。
 和真は背も高く、いわゆるイケメンだろう。仕事も真面目で、会社では優秀。でも、彼が配属されてこなければ、私は今まで通りの平穏な日々を過ごしていた。
「服が乾いたら、出掛けようよ」
 どこへ連れて行かれるのか、不安しかない。
「どこへ……?」
「ん……。楽しい所」
 不安を抑えつつ、私は頷くしかなかった。


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