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幸せの頂点
第2章 栄転



完全に部長のペースで行動する。

レストランからタクシーに乗り、駅に向かう。

一体…。

何処へ?

質問をするのにも躊躇う。

部長からずっと子供扱いを受けてる気分。

質問すればますます馬鹿にされそうな気がする。

一方的に部長が切符を買い、行き先もわからないまま私は部長と改札口を抜ける。

切符は部長がスーツの内ポケットに仕舞い、電車に乗れば部長が指定する席に座るだけだ。

不安が募る。

本店勤務の初日に部長に言われるがままにフラフラと動き回ってるだけの仕事。

売り場の確認すらしていない。

バイヤーとしての基本の仕事を全くやってない。

在庫の確認や発注がバイヤーの仕事。

その本来の仕事を全くせずに私は部長に振り回されてるだけの新人になってる。

部長を無視して百貨店に戻るべきか?

新人いびりを受けてるだけかもしれない。

会社からの評価が怖くなる。


「部長…。」


次の駅で降ります。

そう伝えるつもりが…。


「評価なんか今は気にすんな。新人社員の初日の動きなんぞいちいちと会社は見とらん。会社が社員を評価する時は、ずば抜けた才能を見せた時だけだ。後は2年以上を無駄に過ごす奴だな。」


眠そうに欠伸をしながら部長が言う。

私の考えなんか見透かされてるという事実に驚きが隠せない。


「部長…。」

「結果は必ず出してやる。だから余計な泣き言はお断りだ。」


確証のないぶっきらぼうな言葉を私にぶつけて部長が目を閉じる。

次の瞬間には野太い寝息だけが聞こえて来る。

この男…。

何者なの?

見た目は30代後半の体育会系の男にしか見えない。

列車の2人掛けの座席が狭いと感じるほどにガタイの良い山のような人…。


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