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幸せの頂点
第1章 満足
そこが人生の頂点だと思ってた。
「愛してるよ。」
爽やかな笑顔が私を見る。
自分に伸ばされた手を掴めば優しく手の甲に口付けを受けるお姫様扱いに少し照れる。
洒落た2LDKの賃貸マンション…。
1つ年上の彼と一緒に暮らして1年になる。
この1年…。
何も変わらない。
克(みつる)は誠実で優しい人…。
一流の商社で務める営業マン。
成績がトップの克は既に係長になり、来年には課長へと昇進するだろうと言われてる。
何よりも、私の良き理解者だ。
夢に見たバイヤーの仕事を私は手に入れた。
仕事はハードだけど克がずっと私を支えてくれたお陰で私は凄腕とまで評価を受けた。
お互いが第一線で働き、やり甲斐のある人生を共有する関係に満足してる。
その満足が人生の頂点だと判断した。
「だから…、結婚しよう。」
そっと私の頬に克の指先が触れる。
私の手には指輪が入った小さな箱を握らせる。
全てが完璧な夜だった。
お互いが時間のやり繰りに難しいのに…。
克は残業だった私の為に素敵な食事を用意してくれてプロポーズをした。
「うん…。」
一瞬の躊躇い。
やり甲斐のある仕事。
理解力のある完璧な彼氏。
完璧なプロポーズ。
全てを手に入れたのに…。
その幸せが私の人生の頂点で後は堕ちるだけじゃないかと不安になる。
「焦らなくてもいいよ…。」
私の不安までもを見抜く克が私を抱き締める。
「ごめんね。」
「仕事…、続けたいんだろ?」
その言葉が嬉しかった。
28という年齢で素敵な彼氏が居れば結婚を焦る気持ちも持ってる。
だけど仕事は辞めたくない。
そこまで理解をしてくれる克に感謝する。