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スキンのアンニュイから作品を作ってみませんか?
第9章 匿名希望【ビター・トラップ】
二人横たわったベッドで、彼は腕を枕にしながら、気だるげな表情で私の顔を眺める。まるであの頃のようだと思った。ことが済むといつも、そんな顔で私を見る人だった。
だけど未だ彼の瞳の中の熱がまだ冷めてないのは、お互いに決定的なものをまだ享受し合ってないせいだ。
重たい腕を持ち上げて、私は彼の眼鏡を取り去った。すると彼は少しはにかんで、「これまでさ」と言いながら起き上がった。
「そこそこに彼女もいたし、忘れるとか意識したこともなかったけど、唯一忘れられなかったのが君だった」
それが目的だったのだから、私としては本望だ。私は細く嘆息しながら彼を目で追う。すると彼はワイシャツとスラックスを下着ごと脱ぎ捨て、私の上に覆いかぶさってきた。
「あんな苦々しい想いしたの、それだけだ」
彼の中心で雄々しく反り返る屹立したもの。太ももの辺りにこすり付けられて、その熱さと固さに息を呑む。
「だから誓ったんだよね。もしいつか君に再会したら、俺なしではいられない身体にしてやろうって」
忘れていればよかった。
そんな執着抱かずに、日常を暮らしていればよかった。それができたはずなのに。
お互いに。
「……わたし、も」
謝りたいとは思わなかった。許してほしいとも、言い訳を聞いてほしいとも。だけど代わりに、許さないでほしかった。
そうしたら、忘れないでいてくれる。
「また、君としたいって思ってた」
肩越しに見る薄闇が重くのしかかる。もう一度、引きずり込もうとするように手招きしてる。
甘さの薄い、どこか寂しい恋だった。
ただ胸に残る苦さと、どろどろと滲み出す露のような感情に、私もどこかで取り憑かれていた。そんなの私だけが味わえばよかった。
君の失態は、たったひとつだけ。
私のことなどさっぱりと、忘れていればよかった。
だけど未だ彼の瞳の中の熱がまだ冷めてないのは、お互いに決定的なものをまだ享受し合ってないせいだ。
重たい腕を持ち上げて、私は彼の眼鏡を取り去った。すると彼は少しはにかんで、「これまでさ」と言いながら起き上がった。
「そこそこに彼女もいたし、忘れるとか意識したこともなかったけど、唯一忘れられなかったのが君だった」
それが目的だったのだから、私としては本望だ。私は細く嘆息しながら彼を目で追う。すると彼はワイシャツとスラックスを下着ごと脱ぎ捨て、私の上に覆いかぶさってきた。
「あんな苦々しい想いしたの、それだけだ」
彼の中心で雄々しく反り返る屹立したもの。太ももの辺りにこすり付けられて、その熱さと固さに息を呑む。
「だから誓ったんだよね。もしいつか君に再会したら、俺なしではいられない身体にしてやろうって」
忘れていればよかった。
そんな執着抱かずに、日常を暮らしていればよかった。それができたはずなのに。
お互いに。
「……わたし、も」
謝りたいとは思わなかった。許してほしいとも、言い訳を聞いてほしいとも。だけど代わりに、許さないでほしかった。
そうしたら、忘れないでいてくれる。
「また、君としたいって思ってた」
肩越しに見る薄闇が重くのしかかる。もう一度、引きずり込もうとするように手招きしてる。
甘さの薄い、どこか寂しい恋だった。
ただ胸に残る苦さと、どろどろと滲み出す露のような感情に、私もどこかで取り憑かれていた。そんなの私だけが味わえばよかった。
君の失態は、たったひとつだけ。
私のことなどさっぱりと、忘れていればよかった。