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妹
第1章 繊月(せんげつ)
学園の郵便局から出せば、消印により一発で雅とばれてしまう。
かといって、当家の使用人に任せるのも危険だ。
妹が兄のガールフレンドに無記名で郵便を送るのは、どう考えてもおかしいと思われるだろう。
それに五十万円の報酬振込みもせねばならない。
証拠を残さない為にATMで現金引き出しを行い、現金書留で報酬を支払う為には、銀行も回らなければならない。
思案した結果、雅は彼女つきの使用人・後藤の執務室の内線に電話をかけた。
「雅です。明日、学校帰りに銀座でお買物したいの。……ええ、一人でいいわ。お友達の誕生日プレゼントを探したいだけだから。宜しくね」
雅は内線を切ると、報告書を全て足元にあるシュレッダーにかけて、抹消した。
そして、何事もなかったように、スペイン語の書籍を取り出し、数分後に来る家庭教師のために復習を始めた。