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黄昏異変 肉欲の奈落
第4章 春乱マン
 運転席には慶太、助手席には浩二。後部座席にはお喋りに夢中の早苗とユカリ。
 二人の会話に耳を傾ける浩二と慶太もまた四人一緒の楽しい夜に期待が広がる。

 ようやく到着した宿は一戸建てのコテージが点在する広い温泉郷。
 そのコテージとコテージの間に植えられた桜は、いま、まさに満開。
 赤々と沈む夕陽を受けて、その満開の桜の花びらが音もなく散ってあたりは春気に包まれていた。
 点在するコテージにはそれぞれ露天風呂が付き、二つの寝室と広い居間があった。

 「今夜は同じコテージに泊まるのね」

 四人同室の夜に落ちつかない表情のユカリはこれからのことがいささか心配だった。

 「あああ、恥ずかしいわ。二人だけの方が安心して・・・」
 「分からないわヨ、ユカリさん。安心だけがいいかどうか」

 早苗が意味ありげに言葉を継いだ。

 「あなた、経験あるの」

 ユカリが早苗の顔をのぞきこんだ。

 「あるわけないでしょ。わたしもはじめての経験よ」

 それを聴いていた浩二が明るい声で「なるようになるさ」と笑いを誘う。
 浩二にも経験がなかったが、早苗の母、幸子の日記を思い出していた。
 
 『彰はわたしにこんな世界を教え、こんな体にしたのに、調教の悦びを知ったわたしの体に決して手を出さない。
 ただ、調教されるわたしを見ている。それが彰の楽しみ方。調教されるわたしを見ながら、別の女性と・・・』

 妻の調教を見ながら昂じてゆく夫。
 しかし、もう一方には夫の視線を感じながら犯される妻がいる。
 早苗も日記は読んでいる。
 どちらの視点から母の日記を読んだのか・・・、たぶん母だろう。
 早苗には、他人の目に晒されながら交わることを期待する雰囲気が漂っていた。
 これからはじめて味わうその異常な体験と快感をユカリと共有できたらと、どこかで感じているのではないだろうか。
 ただ一人、二人の女性の秘められた性癖を知る浩二。
 中年男の妄想がいつものように膨脹していく。


 露天風呂には桜の花びらが浮かび、立ち上る湯煙りがユカリと早苗の裸身を包む。
 二人は湯船に身を横たえ、ドライブの疲れを癒す。
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