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第56章 蒼い果実の日々

　何故、母が自分に対してはこんなに厳しいのか。まだ八歳の紅順には理解できなかった。





　今日は待ちに待ったお出かけの日である。紅順の外出は乳母の屋敷に行き先が限定されているが、それでも紅順にとっては貴重な機会なのだ。それも毎月決まってというわけではなく、せいぜいが一年に数度のものだ。たとえ宮殿と乳母の住まいの行き帰りに下町の賑わいをちらとしか見ることができなくとも、大いなる慰めにはなる。