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もうLOVEっ!ハニー!
第8章 優越鬼ごっこ
 私は必死で言葉を探しました。
 どうしてかはわかりません。
 何かを、手遅れにしてしまう気がしたんです。
 取り返しの無い何かを……
 あと二秒で。
 何かが、終わりそうで。
 それでも役立たずの口は動かなくて。
 つばるは一言残して部屋を出て行った。
「……いいや。もう。疲れた」
 そう、言い残して。

 朝目が覚めたとき、どうしようもない浮遊感と、自己嫌悪にトイレに走って吐きました。
 胃の中のモノ全部って思いましたけど、考えたら昨夜は特に何も食べてないんでした。
 酸っぱい胃液が喉にこびりついて、何度も口を濯ぐ。
 授業の準備。
 まずは朝食。
 着替えもして……
 寝間着を脱いで、裸のまま俯く。
 私、誰にどんな顔して会えばいいんですか。
 美弥さん。
 つばる。
 どうして、こんなにも二人に罪悪感が募るんでしょう。

「おはよ、かんな」
 声をかけてきたのは、陸先輩だった。
 赤い髪に爽やかな青いシャツ。
 歓迎してくれた時の陸先輩と同じ。
「三陸先輩……」
「おっ。それで呼んでくれる? なんか久しぶりだね。かんなと話すの」
 ええ、本当に。
「今日は薫さんと一緒じゃないんですね」
「えっ?」
 途端に顔が曇る。
「何か、あったんですか」
「あ、いや。村山は別に関係ないじゃん?」
 ずきり。
 心が痛いです。
 ああ。
 これか。
 これの何倍も、つばるに味あわせたんですね。
 私は。
「かんな?」
「いえ……何でもありません」
 学園に向かいながら、私はつばるに何を言えばいいか考えていた。
 同じクラス。
 こういうときは良いのか悪いのか。

「休み?」
「そおだよ。てか松園さんの方が詳しいんじゃないの?」
 隣の席の女子が笑いながら言う。
「なんでですか」
「だって、早乙女くんが話す女子って松園さんくらいじゃん」
 教室のざわめきが鼓膜から途絶えた。
 ふと彷徨った視界に村山薫が映る。
 ムードメーカーのグループの一人になった彼女はいつも囲まれていた。
 対照的。
 どうして、彼女は華海都寮に来たんでしょう。
 前から気になっていたことを、今しか聞けないと思って。
「村山さん」
 集団の中心で彼女がきょとんとこちらを見る。
 被った猫は、可愛いですね相変わらず。
「どうして、寮に入ったんですか」
 即答だった。
「特別になれるから」
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