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もうLOVEっ!ハニー!
第9章 本性探し

「んあああっ。イイっ。イイわ。貴女方最高ね本当に……見てるだけでぞくぞくしちゃう」
 中庭をたまたま見下ろしていた蘭は、窓を開けて拾った言葉たちに身震いしながら部室に戻った。
 自分を抱き締めて。
「ああ……素敵。ガクがあんな犬みたいになるのは初めて見るかしら? 発情してるくせに静めて静めて、なんて健気なの。かんなちゃんは相変わらず無自覚ビッチちゃんで可愛すぎ。ねえ、ベリテーネ。最高だわ」
 フランス人形に熱く語りかけ、椅子に腰かける。
 溜め息を一つ吐き、テーブルに身を投げ出した。
 カールした黄金色の髪が美しく広がる。
 ぷっくりとした唇で蘭は囁いた。
「……このまま終わらせたりなんかしないわよね。あの淫乱雌豚は」

 美弥が中庭の逢い引きを知ったのは、皮肉にも慰めてもらおうと茜の部屋を訪れた際だった。
「ナニソレ。笑えない」
 スルメを噛みながらテレビを見ていた茜は、声色の変わった親友を眺める。
「あのね、美弥。ガクは本気なんだよ。マジになったら怖いやつって知ってるでしょ? 既成事実作るタイプじゃないけどさ、もう告白はしたみたいだし。とっくに笑えない状況なんじゃないの」
 いつも通りの部屋着、全身ピンクのジャージで美弥は茜の隣に寝転がる。
 風呂上がりの甘い香りが二人を包む。
「茜はボクとガク、どっちを応援したいのかにゃ?」
「あたしはいつだって我関せずよ。エリのときもそうだったでしょー」
 禁句に易々と触れてくるのが茜だ。
 むーっと口を突き出して、美弥は起き上がった。
「かんなはボクのもの」
「いいえ。まだみんなのものよ」
 ズバリと切られて、頭からシーツに沈む。
 モゴモゴと呟く美弥の背中を茜がつつく。
「ど、う、せ、ガクが何しようとあんたはあんたなりに頑張ってくしかないんじゃん。かんちゃん可愛いし、ガク以外も動いてるの見えてるんでしょ。三陸ちゃんとか早乙女とか」
「うー。嫌い嫌い」
「うだうだ言ってもしゃーないじゃん。あたしは見たいドラマが三分後なのしか頭にないの」
「ん。わかった。おやすみ」
「そこで寝ないの」
 強めに叩かれて今度こそ起き上がる。
 時刻は二十二時。
 放課後からもう随分経ってる。
「茜は恋をしないの?」
「瀬戸内くんがいればいーの」
 画面に映った若手俳優。
 人気上昇中の実力派十八歳。
 瀬戸内ディアン。
 ハーフだ。
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