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もうLOVEっ!ハニー!
第13章 諸刃の剣で断ち切る思い出
参ったなあ。
隆人は朝日がうっすらと差し込む倉庫の隅で、冷たい床に横たわって思案していた。
望まない来客に襲われたところまでは記憶が残っている。
寮の裏手にある倉庫を開けようと、鍵を差し込んでる隙に後ろから思い切り殴られた気がする。
左後頭部の鈍痛と全身の倦怠感に顔が歪む。
暴力に晒されることがあまりにも久しくて、突然近づく足音にも油断していた。
六時過ぎという早朝に出歩いてるのなんて、毎朝ウォーキングしてるルカか、隠れ煙草の清龍か、気まぐれに買い出しに行く岳斗くらいなのだから。
倉庫の方に来るのはそのうち清龍。
あいつがわざわざ管理人に近づく訳が無い。
それにしても……聞いていた話だと午後に来るはずだったけど。
どうにか移動できるかと全身を動かしてみる。
手首足首は安い結束バンドを五周ほど巻かれているようで、試しに力を込めるが外れそうにない。
襲撃だとしたら夜中か早朝が狙い目。
昼間に仕掛けてくるわけないか。
後悔先に立たず。
「しっかりしろよな、大人」
自分に毒づきつつ、自分が今どこにいるのかを確かめるように倉庫を眺める。
ああ、第四倉庫。
部室棟の隣の物置の中でも冬にある合唱コンクールの大道具がしまってある場所だ。
鍵を束にして持っていたのが仇となって、人気のないここを選ばれてしまったんだろう。
日の入り方からして八時頃か。
そろそろ鳴海が何か手を打つはずだけど。
華海都寮生総勢が管理人室前に集う。
そこに居ないのは村山薫だけだった。
「犯人って言ってるようなもんじゃんね」
「断定は良くないですわよ、茜。彼女も攫われたのかも、ふふふ。まさかねえ」
蘭はくだらなそうに微笑む。
「五時過ぎにはルカが見とるっちゅうことは、拉致られたとしても一時間で移動できるとこにおるわけやな」
「そんなん校内しかありえなくないか」
岳斗の推理に断言する清龍。
「んじゃあもう別れて探そうよ。男女四人でよくないかに。ボクとー、かんなとー、こばりんとガク」
「勝手に決めない。勝手に行動しない」
廊下にでてきた鳴海が美弥の提案を跳ね除ける。
目の下が黒く見えるのは、やはり隆人の身を案じているのだろう。
「とりあえず、五時半頃に薫が出てく姿が残されてたわ。裏口からね」
「誰も見てへんわけや」
迎えに行ったんですね。