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もうLOVEっ!ハニー!
第13章 諸刃の剣で断ち切る思い出

 来てしまった。
 来てしまった。
 扉一枚向こうに勝見達がいる。
 それだけで全身が役割を放棄して身体から逃げ出そうとしている。
 怒声に保健室内も静まり返る。
 鳴海はそっと刺股を構えて扉に近づいた。
 無理です。
 ダメです。
 多分アイツらそれだけじゃ止めれないです。
 言葉はひとつも口から出てこない。
 つばると勝見の声がする。
「暇にも程があるだろ。同窓会なんて集まりたいやつだけでやれよ。ここのパンフ見た事あるか。過去の交友断ち切りたいやつだけが入ることを許されてんの」
「いじめの主導者が過去断ち切ろうなんて、甘すぎるんだよ。つばる」
 ピリリと空気の色が変わる。
 勘のいい寮生は、今の言葉で、つばるを見る目が一変しただろう。
 確信に変わった方もいるかもしれません。
 美弥が鬼の形相で扉を睨みつけているのが、視野の端に写る。
「捏造はやめろ。俺がいついじめを指示したよ。お前らが勝手に無視して勝手に暴力振るったんだろ」
「それこそ捏造じゃんね。バカんなはヒロくんを無視して押しのけた重罪があるし」
 柚の言葉に笑いが込み上げる。
 ばっかじゃねーですかね。
 無視して押しのけた?
 廊下で執拗に絡んできた入学式の午後ですか。
 あれが、全ての原因ですか。
 色恋に狂った女が彼氏を不当に扱った女に天罰下す神様気取りですか。

「本気で言ってんのか、柚。よく見ろ。周り良く見ろ。他校に刃物持ってやってきて、そこの教師拉致って。お前らにこの先あるのは前科だけだ」
 ムッとした顔で柚が首を掻く。
 手をヒラヒラと振って勝見は笑い飛ばした。
「そもそもお前がいけねぇんだよ、つばる。誘いも断るようになって卒業後の進路も嘘ばっか。かんなを昼休みに犯そうとしたのを止めたのも気に食わねえ」
 誰の殺気だ。
 尚哉と清龍が一歩進み出る。
 やめろ、下がっとけと思いつつ、つばるは会話を広げようと試みる。
「目の前に彼女侍らせておきながら、他の女抱きたかったなんて喚いてんの?」
 これには舞花がカチンときたようだ。
 つかつかと歩み出て目の前に迫る。
 一瞬見えたが右手にカッターを握りしめている。
「ざけんな。抱くんじゃないの。心を殺すの。彼女抱くのと一緒にしてんじゃねえよ」
「うわあ、会話が通じないですね」
 心底軽蔑した声が奈巳から零れた。
 偵察班はまだか。警察はまだか。
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