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もうLOVEっ!ハニー!
第14章 思惑シャッフル

「特に柚は、かんなさんが居なくなったことでメンタルが不安定になって、彼氏に暴力も振るわれてましたし、怒りのぶつけどころがなくて、追い詰められてしまっていて」
 いいですね、理由を聞いてもらえて。
 いじめられた側は話す権利すらなかったのに。
「君は彼らを連れてくることで、同級生が被害に遭うかもしれないと、再度いじめを再燃させるという危険性を想像しなかったの?」
 あくまで落ち着いた声ですが、確実に怒りを含んでいました。
 足元で、ボロボロのスリッパが小刻みに動く。
「その……はい。た、ただ、友人の頼みを聞いてあげないとって思って」
 隆人が弾かれたように立ち上がり、後ろの棚の鉄扉をガラガラと開くと、ひとつのファイルを持ってきた。
 その顔はあまりにも冷たく、つばるも含めて無意識に身が震えた。
 隆人はあるページを開いて薫に突きつける。
「君がこの学園に来てやってきたことの記録だよ。かんなの靴箱、私物に仕掛けたこと。お友達に指示されてやったのかな」
 相談したこと以外にも、独自に調べあげたようでした。
「あまり大人を舐めない方がいい」
 薫はファイルをじっと見つめ、握りこぶしを太腿の上に押し付ける。
「気……気に入らなかったんです。かんなさんが。存在が。柚たちから聞いてた話と違って、上級生にチヤホヤされて……私を除け者にして、避けて、目障りだったんです」
 言い切ってからフーッと息を吐き出す。
「そう。本音をありがとう。君が嫌がらせだと思っていることは全て犯罪だよ。管理人としては君と彼女を同じ場所で過ごさせる訳にはいかない。そこで、君の家族には既に許可を取ったから、隣県の姉妹学園に移籍してもらう」
 薫が表情を失う。
「だっ、誰に連絡をしたんですか」
「今日警察から連絡を受けた母親だよ。向こうから電話がかかってきたんだ。つい一時間前にね。事情を隠す訳にも行かない。被害者と加害者を同じ管轄下に置くことは出来ない」
「母さん……母さんに……っ」
 薫がブルブルと拳を痙攣させる。
 家族に持つ感情だけは共感できそうですね。
 あまりの動揺の大きさに馬鹿な考えが浮かぶ。
「気休めになるかもしれないけど、保護者が参加する行事は一切ない。我が身を守りたいなら次こそトラブルを起こさないようにね」
 薫の処分が決まったところで、彼女は自室に返された。
 隆人が薫の席に移動する。
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