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もうLOVEっ!ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群

「何願うたん」
 岳斗の言葉に美弥はしばらく考えた。
 受験生の中でただ二人の参加者は、進路について決めあぐねている仲だ。
 イタズラに成績だけ伸ばし、ゴールを定められずにいる。
「んー……ガクみたいに愛に生きてないからなあ」
「バカにしとるやろ」
「泥棒猫のくせによく言うよ」
「お前かて一目惚れなら一緒やんけ」
「ボクにもちんちん付いてたらなあ、立派なの」
「やめえや」
 冗談だとわかりつつ苦笑する。
 恋敵だったと言えど、そこにドロリとした感情は残していない。
 そもそも岳斗にそれを抱くのは理不尽すぎる。
 入学時から偏見のない明るさの塊の二人に、因縁など似合わない。
 思い出だけを抱いて生きていくには十分すぎる経験もした。
 美弥は再び流れた星に指を差した。
「遅いんだよ……流星群」
 岳斗は聞こえなかったが、その横顔のあまりの切なさに茶化す言葉を飲み込んだ。
 亜麻色の髪がぶわりと夜風に揺れる。
 目線は真っ直ぐに夜空を見つめて、まるで女神のように美弥は美しかった。
 その姿を遠巻きに見ていた陸が、意を決したように立ち上がる。
「恋愛成就ー!」
 両手をメガホンにして空に向かって叫んだ陸に、全員が目線を向けた。
 こばるが口からチョコを零して、唖然とする。
「キャラじゃねえ……」
 隆人は笑って拍手する。
「いいぞー、青春。三回言いなよー」
 賢と尚哉も呆れて拍手に加わった。
 美弥だけは屈託のない満点の笑顔で陸に叫び返す。
「おそいんだよ、三陸ー!」
「遅くないー!」
「無理してんなよ、三陸ー!」
「無理もするー!」
 耐えきれずに爆笑するこばる。
「やめろよ、陸! 食あたりかよ」
「うっせ、こばる」
 ゲラゲラと笑いながら肩を組むこばるを突き放しつつ、陸は額の汗を拭った。
 村山の件だと誤解する奴もいるだろう。
 生ぬるい夏の夜の空気が、体を嫌に暑くする。
「幸せになる! 幸せになる! 幸せになる!」
 新たな大声の主に賢が破顔する。
 拳を突き上げた尚哉が、何も無かったようにイヤホンを両耳に付け直す。
「いやいやいや! 誤魔化せてないって!」
「うるせ、マリケン」
「最高やん、くー」
「ほらほら他に叫びたいヤツいないのー?」
 美弥の煽りに笑いが広がる。
 流星群がいくつも流れゆく。
 ああ、きっとこの夜は死ぬ前に思い出すかもしれませんね。
 
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