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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を

 声を出そうとして激しく噎せこんだ。
 折れた肋骨が内蔵に刺さっているのかというほど、肺が痛む。
 隆人が手を伸ばすが、首を振って拒絶する。
 触られる方が不快だ。
「屋上……あれ、誰がやったの」
「……老朽化でしょ」
「頼むよ。会話するのも辛いだろうけど、本当のことだけ話してくれ」
 はーっ、はーっ、と自分の呼吸が響く。
 この程度で済んでるのが奇跡なんだ。
 毎日見下ろしていたあの高さから。
「個人的な、喧嘩ですよ」
「君とつばるが話してるとこなんて見たことないよ」
「ですよね……俺も今日初めてちゃんと話しました」
「それでこの状況になりえるかい?」
「知らない間に恨みを買ってたんですよ」
「ニコチンの過剰摂取はいつから」
「本数増えたのは七月から。今日は間違えて吸殻入れた水飲んじゃったんです」
 丸椅子に座った隆人が、ダンダンと自分の太ももを気が急くように叩く。
「嘘はやめてくれ……本当に大変なことを起こしたんだよ。君らは」
 ビリビリと空気が震えてる。
 大人の怒りは底が知れない。
「屋上封鎖ですよね……」
「つばると君は、家族に連絡が必要になる」
 やはり、そうか。
 思い描いていた最悪。
「この程度の怪我で?」
「全治四ヶ月だよ……つばるに至っては頭部を強く打っているから後遺症が未知の世界だ」
 呼吸が落ち着いてきた。
 思考もクリアになってくる。
 そうか。
 あと少しで自由だったのに。
 半年後には奨学金で大学に進んで、関わりのない人生が用意されるはずだったのに。
 なんで、こうなる。
 隆人が手を組み、深く息を吐く。
「うちの寮に来る生徒にとって、一番避けたいのが家族との接触だ。僕もわかってる。特に清龍は三年間勉学の伸びも凄かったし、このまま進学まで平和に行くと思ってたよ。だから隠れタバコくらいのやんちゃは見逃した。でも、今回は……何があったの」
 わかってるなら、やめてくれよ。
 脳内で愚痴を吐く。
「治療費は借金にして、どうにか連絡だけはやめてくれませんかね……」
「軽い骨折とは訳が違うんだよ」
「頼むよ、隆にい……それだけは」
 重苦しい沈黙が降りる。
 相部屋だが、他のベッドの主は寝ているようだ。
 これから何日ここで過ごす。
 その先に待つのが絶望なんて。
 いや、今更だ。
 どうして受験が受けられる。
 入院が続くと言うのに。
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