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もうLOVEっ!ハニー!
第18章 砂の城を守って
手を握ったまま眠りに落ちたかんなを見つめて、岳斗はざわめく胸の内に気持ちを蔭らせた。
今日の見舞いについて何も聞いてこなかった。
容態を心配する言葉もない。
つばるのことは、こばるに尋ねとったな。
つばる……
手をそっと外して、両手の甲で目を覆う。
隣のかんなに肘が当たらぬよう気をつけて。
アイツ、清と何を話したんやろ。
はよ目覚めろや。
いや、目覚めたとして、聞けるか。
ただでさえ、かんなに何一つ問い詰められない自分が、つばるから真実を聞き出せるのか。
小さな寝息を聞いて、そっと隣を見る。
片腕を枕にして、かんなの方を向いて横になる。
痴漢話が嘘やったとしたら、その痕を付けたんは俺の知っとる奴やろうね。
心配をさせんように。
ふわふわの髪を撫でる。
小さく唸って身動ぎをする。
起こさないように静かに撫でる。
そんなに……
そんなに、俺は信用出来んか。
奥歯がギチリと鳴り、顎の力を抜く。
間違えるな。
守るべき対象を。
焦りから体を求めるのも歯止めが利いて良かった。
今日は優しく抱ける気がしなかったから。
これまで知らなかった自分の衝動。
嫉妬なのか、不安なのか分からない。
ただ、勢いに任せてしまうのは危険なのはわかる。
目の前の小さな体を壊れぬように、落ち着いてからじゃないと。
床に目をやると、月明かりのこぼれるカーテンの隙間に、ゆらゆらと風で揺れる葉の影が映る。
病室のやり取りが脳裏に蘇る。
いつも以上に言葉少なく、謎の申し訳なさに溢れていた清龍。
あんなに話しづらい空気は無い。
隆人が携帯の話をしたので三年で代替品を買いに行ったが、司がデータが消えたと話していた。
でも、引き継ぎはできるような反応だった。
司も何かを隠しとる。
あの日以来、一人になった三階で何を考えているんだろう。
明日の試合の後には、今日の見舞いの報告も兼ねて話しに行ってみよう。
いやいや、雑念すぎるやろ。
引退試合やで。
「あー……なしてこんなことになってんねやろ」
溜息に言葉を乗せるように。
もし今回優勝したとして、心から喜べるだろうか。
こばるは。
気が気じゃない三回戦になるだろう。
なんてタイミングだ。
眠れぬ気持ちに起き上がる。
かんなの鍵を借りて、食堂に向かった。