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もうLOVEっ!ハニー!
第18章 砂の城を守って
余った缶の中身を飲みながら、汐里が過去を振り返るように零す。
「この歳になるとよ、知り合いの何人か自殺したり事故にあったりしてな。法事に二回くらい出たんだ。何を考えてたのかって勝手に推測してもよ、結局本人にしか……わからねえんだよなあ」
この時間が許す暗い吐露。
岳斗は汐里の人生の話を何度か聞いた。
結婚するはずだった彼女の話。
この寮に務める前の職場での大喧嘩。
隆人との出会い。
そのどれもが教訓をくれた。
「親友とか彼女とかさ、いちばん身近に感じても隠し事ひとつない関係なんてねえよ。それごと愛すか、暴いて乗り越えるか、バイバイかだろ」
「バイバイして後悔しとる?」
「しても二年だな」
二年か。
二年ありゃ色々乗り越えれそうやな。
卒業した後、かんなは二年ここで過ごすんか。
「……留年しよかな」
「そんなに年下彼女が心配か」
気軽に見抜くんやめろや。
翌朝、こばるは一番に部室入りしていた。
学園の旗や、ユニフォーム一式、練習用ボールなどを整理しつつ、何も考えないように手を動かす。
試合が終わったら打ち上げを抜けて病院に行く。
どんな手段を使っても今日つばるを起こさないと。
あいつの人生守るには、家族に連絡を入れさせる訳には行かない。
どんな後遺症があったとしても、中退して働いてでも守ってやらないと。
「おはよ、こばる」
「早いな、準備おっつー」
同級生が続々現れる。
今日の日を楽しみにキツイ練習を共にした。
バスの音がする。
今日も華海都寮のメンバーも観戦に来るはず。
負ける訳にはいかない。
珍しく最後に来たのが岳斗だった。
「ガク、遅せぇよ」
顧問の言葉に両手を合わせながら。
「楽しみで寝れなかってん」
「遠足かよ!」
その様子を見ながら、こばるはベンチに腰かけて靴紐を結び直していた。
一回戦と二回戦の合計得点数は、ほぼ拮抗してる。
今日の相手は練習試合で負けたことの無い隣市のチームだ。
ここは、得点王に向けて伸ばしどころ。
視線に気づいた岳斗が近づいてくる。
「一番のりやって?」
「そっすよ。今日は気合い入れてるんで」
「俺も負けてられんね」
「ほら、これ」
以前貰ったピアスを見せる。
岳斗は嬉しそうに笑った。
「お守りやんけ」
「うちの寮のキツネ様のなんで」
つばる、報告待ってろよ。