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もうLOVEっ!ハニー!
第19章 友情の殻を破らせて

 八月最終日は雨でした。
「旅行いきたかったな」
「十一月に先延ばしですね」
 しとしとと雨音を聞きながら、窓辺に二人。
 旅行計画は取りやめました。
 お見舞いも行きたかったですし、報告や手続きに忙しく動いている隆人さんに申請を出す気も起きなかったのです。
 きっと理由はそれだけじゃない。
 気持ちが向かなかった。
 ガク先輩は追い込むように図書館に通い、私は宿題と採点バイトに勤しみました。
 そうして夕飯を済ませたあとで、毎晩部屋で一緒にのんびり語らって過ごしました。
 本当に生理が来たので、体は触れ合わず、パジャマパーティーがあればこんな感じなのかなと思うほど穏やかに、座ったり寝転んだり。
 色んな会話をしました。
 好きな映画の話。
 ハズレのない俳優が出てると安心する話。
 ゾンビものにボケたおじいちゃんが出てくると大活躍する話。
「ほんで歩行器でヨロヨロ逃げてくねん。これが遅すぎてめっちゃ笑える」
「ふふふ、お腹痛い……愉快なキャラがいっぱいですね、それ」
「なあー。ゾンビって敵はおんなじ、人類がピンチなんもおんなじ、あとはキャラ勝負やろな」
 二年の頃よく映画を見ていたらしい。
「汐里が貸してくれてん。B級ばっか」
「私は映画ほとんど見たことないんですよね」
「じゃあ、これから土日は映画二本ずつ観よか」
 窓にはりついた水滴が流れ落ちてく。
 汚れを落とすように。
「いいですね。でもB級以外も見てみたいです」
「え、アクション?」
「じゃなくて、恋愛ものとか」
 夏の雨は梅雨と違って勢いがある。
 校庭は大きな池のようになってる。
「恋愛かあ……洋画限定がええかな」
「なんでですか」
「いや、そりゃ、恥ずない?」
「あー、確かに」
「確かに、て」
 過去の話もしました。
 入学した時にいた上級生。
 隆人さんの従兄弟と紹介された時の、陸さんの愉快な慌てぶり。
 進級する時の部屋大移動。
「にしても、今年で最後か」
 部活を引退し、受験が控える最後の半年。
「絶対泣かんと思とったけど、かんな残して卒業はちょっと泣くかも」
「今から泣けてくるんでやめてください」
「あははっ、可愛いな」
 後ろからギューッとハグをして笑う。
 雨を眺めて、取り留めのない話をいつまでも。
 明日は始業式。
 あまりに長い夏休みでした。
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