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もうLOVEっ!ハニー!
第20章 秘密のシャーベット
プロのメイクさばきはいつまでも見ていたいくらい、圧巻でした。
大小様々なブラシ、手の甲で色を確かめてから、確かな仕上がりに導いていく。
ショートのルカはいくつも流れが交差するようにセットされ、長髪のアンナはクルクルに巻いた髪をハーフアップにして、見たことの無いネックレスのような髪留めで鮮やかに。
「緋鷺さん、最新話見ました? 犯人予測全員外れましたよね」
「見たよ。いい線行ってたんだけどね、あれはミスリードだったねえ」
「でもこれ以上盛り上がる気しないよねえ、ルカちゃん。あの裏切りがピーク」
「でも意外と一話の被害者が復讐劇を完遂するかもですよ」
「その読みは鋭い。アンナ脱帽」
目を閉じながらも会話が止まらないのも、なんだか関係性が見えて素敵です。
壁にもたれて小脇はスケジュール調整なのか、すごいスピードでタップをしている。
雑談するのも場違いなので、じーっとメイクを観察して待機する。
岳斗は顎に手を当てながら、興味深そうにメイク道具を眺めていた。
メイク室は四人同時進行で、右にルカとアンナ、左には見覚えのあるティーンモデルが二人。
もはや夢のような景色です。
それぞれがメイク師とマネージャーと話をしながら、さながら女子会のようですが、緊張感だけは静かに張りつめてます。
「ルカ完了。錦くんおいで」
「え、もうですか」
心の準備が出来てなかったのか、岳斗が聞き返すと、椅子から降りたルカが手を引いた。
「大丈夫ですよ。鏡の自分をよく見ていてください。私たちの快感の一部が体験できますよ」
入れ替わりで隣の壁にもたれたルカの顔は、今朝とは異なる存在感でした。
ピンクのアイラインは色濃く、チークも普段よりハッキリとして、目力が何倍にもなってます。
「どうですか、松ちゃん」
「すごく、楽しいです。見てるだけでも。宝箱みたいに色んなメイク道具が出てきて、作品が出来上がるのを一から見せてもらって」
ふふ、と満足そうに笑う。
「でしょ。私ね、学園も大好きだけど、ここはもっと好きなんです。私という存在を無限に飾り付けてくれる、唯一無二の場所です」
いつの間にかスマホをしまっていた小脇がうんうん、と頷いた。
「ハマるとたまらないよね。写真見返したら他人みたいな自分が写ってるわけ。自分の理解者は自分なのに知らない顔を引き出されてたりしてね」