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もうLOVEっ!ハニー!
第22章 三角の終焉

「隆にいなら全部聞いても上手く伏せてくれると思う」
「同感です」
「したら、土曜日は信頼して待っとって」
 無言で頷いた横顔は、言いたいことを言葉に出来ないもどかしさに包まれていた。だが、今話して何が変わるわけでもないと判断したのか、唇は閉じたままだった。
 そろそろ空腹が苛立ちを誘ってくるが、今は人が一気に集まる時間帯は避けたい。今日が撮影日と知っているのはルカだけだろうが、早退の噂は美弥の耳にも届いているかもしれない。
 それなら先にシャワー室に行こうかと立ち上がる。
「どう、でしたか」
 棚から着替えを取り出しつつ、か細い声を耳が拾う。
「本格的にお仕事始まるんですよね。おめでとう、と言っていいですか」
 服の束をテレビ脇に置いて、無意識に顎を撫でる。
 何から話そか。
 どこまで言うべきか。
「……んー。めでたい。めでたい? 多分めでたいわな。本契約が決まったんも、相方が出来たんも順調やと思う」
「相方?」
「かんなが見に来た時のオーディションで先頭の、こう、ウルフヘアの奴覚えとるかな。あいつとペアで撮影で……セット売りらしいわ」
「ルカ先輩とアンナさんみたいにですか」
 同意しかけて、あそこまで密着する気はないなと苦く唇を噛む。正直得意じゃないタイプだ。この寮にはいない。この寮どころか今まで会ったことのない飄々とした男だ。にやついた垂れ目が撮影時には刺すような眼光を放つのが印象に残っている。
 あれと常に比較されるのはヒリつくものがある。
「ほんで、小脇さんに言われたんが……」
 SNSでの発信と彼女の存在を決して見せないこと。
 どっちもハードルが高い。
 参考にと湊のアカウントを見たが、あのじっとりした空気のブログは自分に向いていない。自分に合った無理のないセルフプロデュースと言われても不特定多数に発信したいことなど思いつかない。
 黙って聞いていたかんなが、おそるおそる口を開く。
「岳斗さん、毎朝散歩してるじゃないですか。結構珍しいと思うんですよね。その時に写真を撮って気分を綴るのっていいんじゃないですかね」
 ルーティンを活用か。名案やけど抵抗あるな。
「来週火曜に用意して来いって。ちょっとスマホ弄る時間増える」
「気にしないでください。けど、デートできないのはちょっと寂しいですね」
「マスクと帽子いるな」
 真面目に目を合わせてから破願した。
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