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もうLOVEっ!ハニー!
第3章 追いかけてきた過去

 息が詰まる。
 足音が近づいてくる。
 怖くて振り返れない。
 早く過ぎろとばかり願う。
 息が荒くなる。
 早く。
 足がガクガク痙攣した。
 ポン。
 背中を軽く叩かれた。
「寝れた?」
 おはよう。
 そんな挨拶みたいに。
 そして、愉快そうな笑い。
 階段に向かう背中を一瞬だけ見た自分に、意地悪い視線が突き刺さる。
 わかってたんだ。
 私が見ることを。
 交差した視線の先で、つばるが声を出さずになにか言った。
「お待たせ、かんな。行こう」
 出てきた美弥にしがみつく。
 その胸元に甘えるように。
「にゃ? どしたの、かんな。朝からそんなことされたらボク嬉しすぎるんだけど」
 ぎゅーっと抱きしめてくれるその細い腕が震えを鎮めてくれた。
 熱を鎮めてくれた。
 でもどうせなら……

 そのまま壊して欲しかった。

 ガチャ。
「お、おはようございます……」
 向かいの部屋から村山薫が現れる。
 可愛らしいワンピースにカーディガンを羽織って。
「おはよ」
 美弥の挨拶は素っ気ない。
―絶対腹黒だよ―
 昨晩のセリフが蘇る。
 そのせいで、彼女さえも直視できなかった。
 ああ。
 吐き気がする。
 倒れそうです。
「かんな。医務室行く?」
「いえ……大丈夫です」
 嘘つきな自分を見るのはこれで何度目でしょう。
 美弥に支えてもらいながら食堂に向かった。
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