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もうLOVEっ!ハニー!
第4章 暴露ゲーム開始
 パタンと扉を締めて、そのノブに寄りかかるように頭を付ける。
 ひんやりとした感触に目を瞑って。
 あの家では味わえなかった安息。
 美弥の言葉を思い出しながらまた熱くなってきた目頭を押さえ、洗面所に向かった。
 顔を冷水で洗ってかけてあったバスタオルで優しく拭う。
 ふーっと大きく息を吐いた時にハッとした。
 握り締めたタオルを急いで落とす。
 少し湿り気のあるそれからは、感じたことのない香りがしたから。
 わかりますよね。
 普通は。
 自分の体臭くらい。
 それとは異なる匂いくらい。
 走るようにベッドに近寄り勢いよくシーツを剥がしとる。
 一旦床に捨てて、布団をベランダにかけると、共同の大型洗濯機があるフロアまでタオルとシーツを抱えて小走りで向かった。

 西エリアの浴場の隣。
 ドアのないその空間にはランドリーにあるものとそれほど変わらない機械がずらりと並んで低音を奏でながら腰を据えている。
 乱れた息を整えて、端の一台に放り込み電源を入れた。
 流れ出す水を上から眺める。
 だんだんと色を深めるシーツ。
 ナニかが染み出してくる気がして逃げるように蓋を閉めた。
「あれ? もう朝食は済んだの」
 入口に衣服を抱えた陸が立っていた。
「陸さん……おはようございます」
「うん、おはよ。具合悪いってこばるから聞いてるけど、大丈夫?」
 寝癖が残る赤髪を揺らしながら首を傾げる。
 なんででしょう。
 CMに出てくるような柴犬が浮かんだ。
「大丈夫です」
「ってしか言えないよね~大抵は、さ」
 隣の機械に放り込みながら口ずさむようにそう呟いた。
「俺ね。大丈夫って質問が一番きらい」
 ふふっと笑ってしまう。
「そう云いながらしてるじゃないですか」
「そ。語彙力の無さが悔やまれるよね……全く。なんだろ。英語で言うワッツアップみたいな日本語があれば良いのに」
 私は顎に手をかけて思案した。
「ご機嫌いかが? とかですかね」
「いいね。今度からそう言おう」
 陸がにこりと笑ってこう言った。
「ご機嫌いかが? かんな」
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