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ヘタレ男の夏の夜
第1章 ヘタレ男の夏の夜
『栄町花火大会 7/28(日) 3000発の花火が打ち上がります。
場所:さかえ海岸 』
「もうそんな季節か。」
都内のアスファルトから照り出す日差しが日に日に暑さを増す季節。
都内近郊よりは幾分か涼しいこの小さな港町を出てから早10年。
仕事の都合がつかないと、帰ることをためらっていた。
綺麗とは言えないヨレたTシャツにハーフパンツ、ビーチサンダルに少なめの荷物を一つ持って、離れて暮らしても忘れることのない道を歩きながら、実家へと向かう。
「浩介。ごめんね、ありがとう。」
実家に着くなり出迎えた母親が申し訳なさそうに謝る。
「いや。仕事も落ち着いてるからそれは平気。それより親父は?」
「こっちにいるわ。」
最後に見た時よりも白髪が増え、少し痩せた母親の後をついて行き、親父の寝室へと向かった。
古くなった障子が貼られた戸を開けるとーー…。
「おう、浩介。悪りぃな。」
口調は変わらないが、顔も体も痩せ細った親父が布団に横たわりながら力のない顔で笑う。
場所:さかえ海岸 』
「もうそんな季節か。」
都内のアスファルトから照り出す日差しが日に日に暑さを増す季節。
都内近郊よりは幾分か涼しいこの小さな港町を出てから早10年。
仕事の都合がつかないと、帰ることをためらっていた。
綺麗とは言えないヨレたTシャツにハーフパンツ、ビーチサンダルに少なめの荷物を一つ持って、離れて暮らしても忘れることのない道を歩きながら、実家へと向かう。
「浩介。ごめんね、ありがとう。」
実家に着くなり出迎えた母親が申し訳なさそうに謝る。
「いや。仕事も落ち着いてるからそれは平気。それより親父は?」
「こっちにいるわ。」
最後に見た時よりも白髪が増え、少し痩せた母親の後をついて行き、親父の寝室へと向かった。
古くなった障子が貼られた戸を開けるとーー…。
「おう、浩介。悪りぃな。」
口調は変わらないが、顔も体も痩せ細った親父が布団に横たわりながら力のない顔で笑う。