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独占欲に捕らわれて
第4章 予想外
「オレは近場にいるから、チサちゃんはお母さんから借金取りの話聞いてきて。名刺でも置いていってくれてればいいけど……。金融名と、できれば事務所の住所も聞き出してくれると助かるかも」
「それはいいけど、事務所に乗り込むつもり?」
千聖が眉間にシワを寄せると、紅玲はおかしそうに笑う。

「乗り込むって、別に喧嘩ふっかけるわけじゃないんだから。マサくんの代理人を名乗って、借金返してきたげる」
「そう……。それで、借金返済の見返りに、私は何をすればいいの?」
千聖が身構えて聞くと、紅玲は長い人差し指をすっと伸ばした。
「1ヶ月、オレのセフレになって」
「それだけ?」
「そうだよ」

(よかったけど、拍子抜け……。運命だなんだ言ってるから、結婚を前提に彼女になれとか言われると思った……)
「あ、肝心なこと聞き忘れてた」
「なに……?」
「チサちゃんの実家って、ここからどれくらい?」
紅玲は固い顔をして聞く。
「電車で2時間弱ってところかしら」
「よかった、とんでもなく遠いところじゃなくて」
小さく息を吐いて表情を緩めると、紅玲はボールペンを持った。

「明日、オレが利子も含めて借金を肩代わりする。その代わり、チサちゃんは1ヶ月オレのセフレってことでいいね?」
「えぇ」
千聖が頷くと、紅玲はボールペンを走らせる。
「じゃあ、これはチサちゃんが持っててね」
紅玲が差し出した紙には意外と綺麗な文字で、借金はすべて紅玲が肩代わりするということと、千聖が明日から1ヶ月、紅玲のセフレになるということが書いてある。セフレ期間に至っては、ご丁寧に時間まで書かれていた。

「意外と几帳面ね」
「口約束だけじゃ、チサちゃんも不安だと思って」
「そういうの、嫌いじゃないわ。安心して取引ができるもの」
千聖は手書きの契約書を丁寧に畳むと、財布にしまった。

「明日は9時に駅に集合ってことでいいかな?」
「えぇ、構わないわ」
「じゃあ、連絡先交換しとこうか」
紅玲はスマホを出しながら言う。
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