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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
「いいよ、なんでも聞いて」
「どうして私が運命の人だって言いきれるの?」
紅玲は一瞬目を丸くするも、いつものヘラヘラした笑顔に戻った。

「前にも話したと思うけど……」
「そうじゃなくてさ」
千聖が言葉を遮ると、紅玲は不安げな顔をする。
「私があなたの立場なら、女性不信になってた。視界に入れるのすら、嫌になると思う」
「何を言っているの?」
紅玲の表情は固い。

「斗真から聞いたわ。特に、大学時代が酷かったって……。ねぇ、あんなことあったのに、どうして私を好きになれるの? 運命だって言えるの?」
千聖は酷いことを聞いている自覚があっても、追求をやめられなかった。それが紅玲のことが嫌いだからではない。それ以外に理由があるのはハッキリ分かっているが、それがどんなものか、千聖自身よく分かっていない。
「トーマってば、おしゃべりだなぁ……」
紅玲は伏し目がちに、困ったような顔をする。

「そうだねぇ……。一目惚れしちゃったから。それじゃあダメ?」
紅玲はこてん、と首を傾げながら言う。
「どうも納得出来ないわ」
「んー……そう言われてもね。好きになるのに理由なんてないから、難しいなぁ……」
紅玲が唸っていると、料理が運ばれてきた。おぼんの上には天ぷらとうどん、ほうれん草のおひたしが並んでいる。

「冷めないうちに食べようね」
紅玲は割り箸を割ると、天ぷらに塩を振って食べ始めた。
(逃げられた。まぁ、いっか……)
千聖も割り箸を割ると、皿の隅に醤油をたらした。さつまいもの天ぷらに少量の醤油を付けて食べると、衣が軽やかにサクッとしていて食べやすい。さつまいももホクホクしている。

「油っぽくないから、食べやすいわね」
「でしょ? オレ油物食べると胃もたれしやすいんだけど、ここのは平気なんだよね」
紅玲は美味しそうに天ぷらをかじる。

(しっかしまぁ、これからホテルに行くのに天ぷらにそばって、なんか笑える)
千聖は小さく笑うと、うどんをすすった。
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