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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
水曜日、紅玲からの呼び出しがなかったため、千聖は久しぶりにひとりで居酒屋へ行こうと、ヒールの音を響かせながら、夜の街を歩く。
「どこで呑もうかしら?」
今まで行った居酒屋のメニューを思い浮かべながら歩いていると、ふたり組の女性とすれ違う。
「ねぇ、さっきのヤバくない? あんな修羅場初めて見たわ」
「ねー。てかあの白メッシュの男の人イケメンだったー! バンドマンかな?」
「だとしたらウケるー! てか、そうだったらあの男が悪いんじゃん?」
女性達はゲラゲラと笑い声を上げながら、千聖の横を通り過ぎた。
(白メッシュのバンドマン……?)
「まさか……!」
紅玲と一致するふたつの特徴に胸騒ぎを覚えた千聖は、駆け足で彼女達が来た方向へ向かう。角を曲がろうとすると、誰かにぶつかり、転びそうになる。
「きゃあっ!?」
「ちょっと、危ないじゃない! なに考えてるのよ!」
ぶつかってしまった女性はウェーブのかかった髪やシフォンスカートに似合わない、蔑むような口調と目で言うと、早歩きでその場を去った。
「感じ悪い……。って、今はそれどころじゃなくて……!」
千聖は曲がった先を見たが、人通りが少ない道に、紅玲の姿はどこにもない。それどころか、白メッシュにバンドマンの様な服装の男すらいなかった。
「……なにしてんだろ、私……」
紅玲の姿がなかったというのに、千聖はもやもやした気持ちを抱えたまま、近くの居酒屋に入った。
ふたり掛けの席に案内されると、さっそくハイボールを注文する。運ばれてくると、もやもやした気持ちを誤魔化すように飲み干すが、気持ちが晴れることは無い。
この近辺にはライブハウスや、生演奏が売りの飲み屋がいくつかある。紅玲と似たような容姿の男はいくらでもいる。千聖はそのことを知ってはいるが、どうしても気になって仕方がない。
「お姉さんどーしたの? しんみりしちゃって。失恋でもした? 一緒にどうよ?」
ロン毛茶髪の男は断りもなしに、ビール片手に千聖の前に座る。
「どこで呑もうかしら?」
今まで行った居酒屋のメニューを思い浮かべながら歩いていると、ふたり組の女性とすれ違う。
「ねぇ、さっきのヤバくない? あんな修羅場初めて見たわ」
「ねー。てかあの白メッシュの男の人イケメンだったー! バンドマンかな?」
「だとしたらウケるー! てか、そうだったらあの男が悪いんじゃん?」
女性達はゲラゲラと笑い声を上げながら、千聖の横を通り過ぎた。
(白メッシュのバンドマン……?)
「まさか……!」
紅玲と一致するふたつの特徴に胸騒ぎを覚えた千聖は、駆け足で彼女達が来た方向へ向かう。角を曲がろうとすると、誰かにぶつかり、転びそうになる。
「きゃあっ!?」
「ちょっと、危ないじゃない! なに考えてるのよ!」
ぶつかってしまった女性はウェーブのかかった髪やシフォンスカートに似合わない、蔑むような口調と目で言うと、早歩きでその場を去った。
「感じ悪い……。って、今はそれどころじゃなくて……!」
千聖は曲がった先を見たが、人通りが少ない道に、紅玲の姿はどこにもない。それどころか、白メッシュにバンドマンの様な服装の男すらいなかった。
「……なにしてんだろ、私……」
紅玲の姿がなかったというのに、千聖はもやもやした気持ちを抱えたまま、近くの居酒屋に入った。
ふたり掛けの席に案内されると、さっそくハイボールを注文する。運ばれてくると、もやもやした気持ちを誤魔化すように飲み干すが、気持ちが晴れることは無い。
この近辺にはライブハウスや、生演奏が売りの飲み屋がいくつかある。紅玲と似たような容姿の男はいくらでもいる。千聖はそのことを知ってはいるが、どうしても気になって仕方がない。
「お姉さんどーしたの? しんみりしちゃって。失恋でもした? 一緒にどうよ?」
ロン毛茶髪の男は断りもなしに、ビール片手に千聖の前に座る。