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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
「うっ……」
(重い……)
いくら紅玲が細身とはいえ、身長差のせいで余計に重く感じてしまう。いくら酔ってないとはいえ、千聖も酒を呑んでいたせいで、思うように力が入らない。
「ごめんね、チサちゃん……。重いでしょ?」
「これくらい平気よ」
しおらしく謝る紅玲に強がってみせると、千聖は会計を済ませようとレジまで行く。

「タクシーをお呼びしましょうか?」
「大丈夫、すぐ近くだから」
心配そうな顔をするマスターに、千聖は笑顔を向けた。

「チサちゃん、代わりに払って」
紅玲は黒い本革の長財布を、千聖に差し出す。
「はいはい。……おいくらかしら?」
「1万3千円になります」
予想以上の金額に、千聖は財布を落としそうになる。カクテル1杯1000円として考えても、呑み過ぎだ。斗真の分が含まれているとしても、彼からはアルコールの匂いがしなかったことから、1、2杯程度だろう。

「もう、呑み過ぎよ……」
千聖は財布を開けながら言う。
「呑んでないとやってらんないの」
子供のように言う紅玲にうんざりしながら会計を済ませると、紅玲の上着のポケットに財布を入れてドアを開ける。
「どうか、お気をつけて……」
マスターは眉尻を下げながら、ふたりを見送った。

「よいしょ、っと……」
千聖は紅玲を担ぎ直すと、ホテル街に向かって歩き出す。すぐ近くの格安ホテルに入ると、紅玲をソファに座らせた。
「ごめんね、チサちゃん……。ありがと」
紅玲は笑顔で言うが、今にも泣きそうな目で言う。
「謝るか感謝するか、どっちかにしなさいよ……。とりあえず、水飲んで」
千聖はコンビニボックスからミネラルウォーターを取り出すと、キャップを開けて紅玲に持たせた。

「ありがと」
紅玲はひと口呑んで、ため息をつく。
「ねぇ、何があったの?」
「昼過ぎに父さんがうちに来て、夜は……ミチルと偶然会った……」
ミチルという名前に、千聖は目を見開く。
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