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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち
名刺の交換が終われば、先ほどまで不穏な空気はなくなりリゾート開発の話が始まった。
この調子だと、私が佐伯さんに抱きついていたのも、触れるだけのキスをしたのも見られていないだろうと安心する。
私の勝手だけど、これ以上、夏樹を苦しめたくなかったし、変な誤解で夏樹との関係がぎくしゃくするのだけは嫌だった。
しばらく黙ってふたりの話を聞いていたけど終わる気配はない。
時計を見れば9時を回っていて真和の事が心配になる。
「お話の途中ごめんなさい。そろそろ真和を迎えにいかないと」
「そうだ。真和は?」
「ソンちゃんに預かってもらってるの。だからあまり遅くなるとね」
私の言葉で戻ることになった。
駐車場に行けば私の横には夏樹の車が停めてあり、車を見て私がここにいることが分かったみたいだった。
「じゃあ、夏樹またね」
お互いに車があるから乗り込む車は違う。
私は何も考えずに自分の車に乗り、助手席に佐伯さんが座った。
その時の夏樹の表情を見ていなかった。
見ていたら、少しは違っていたのかもしれない……