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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第17章 3 羅袖 香を動すも 香已まず
壇上の下で薫樹はスーパーモデルのTAMAKIこと唐沢環を眺め、懐かしく感じていた。
彼女とはまだ薫樹が調香学校の学生であったころ、フランスのヴェルサイユで出会っていた。もう10年以上前のことだ。
彼女は売り出し中のモデルで薫樹の調香学校の教師でもあるジャン・モロウの恋人だった。
会長をはじめとする会社の重鎮に囲まれ、媚びることなく環は言葉を交わしている。
「さすがにスーパーモデルを間近で見るのは初めてですよー。かっこいいですねえ。女性だけどきりっとして」
薫樹の隣で涼介が感嘆している。
「うん、そうだね」
やがて環が社長に連れられて薫樹の前にやってきた。環より背は低いが恰幅の良い社長は機嫌よく薫樹に紹介始めると環が制する。
「社長、私、彼とは旧知の仲なのです。ご紹介は結構ですわ」
「えっ? 兵部君と知り合いなのか? それは知らなかったなあ。そうなのかね?」
「ええ、とは言っても、お会いするのは10年以上ぶりですがね」
「そうかそうか。まあコンセプトは君に伝えてあったがTAMAKI君を目の前にするとよりイメージが沸くだろう。あとは君に任せるよ」
社長は愛想を振りまきながら他会社の重役たちの中へ入っていく。
「お久しぶり」
「本当に久しぶりだね。そうだ紹介するよ、今、チームに加わってくれている清水涼介君」
「清水涼介です。お美しい環さんにお会いできて光栄です。よろしく」
「よろしく」
爽やかに笑顔を見せる涼介とは対照的ににこりともしない環は差し出された手にも無視をする。
「馴れ馴れしかったですかね。失礼」
さっと手を涼介は引いた。後ろの方で自由にパーティを愉しむ女子社員たちが着飾った様子で涼介の様子をうかがっている。
彼女たちは涼介が今フリーであることを知っており、あわよくばと狙っているのだ。薫樹と違い気さくな涼介はそんな女子社員たちに愛想よく振舞う。
「じゃ、兵部さん、僕も楽しんできます」
「ああ」
涼介はこちらをチラチラ見ている女子社員数名の中に紛れ込んでいった。軽く黄色い歓声が上がっている。
彼女とはまだ薫樹が調香学校の学生であったころ、フランスのヴェルサイユで出会っていた。もう10年以上前のことだ。
彼女は売り出し中のモデルで薫樹の調香学校の教師でもあるジャン・モロウの恋人だった。
会長をはじめとする会社の重鎮に囲まれ、媚びることなく環は言葉を交わしている。
「さすがにスーパーモデルを間近で見るのは初めてですよー。かっこいいですねえ。女性だけどきりっとして」
薫樹の隣で涼介が感嘆している。
「うん、そうだね」
やがて環が社長に連れられて薫樹の前にやってきた。環より背は低いが恰幅の良い社長は機嫌よく薫樹に紹介始めると環が制する。
「社長、私、彼とは旧知の仲なのです。ご紹介は結構ですわ」
「えっ? 兵部君と知り合いなのか? それは知らなかったなあ。そうなのかね?」
「ええ、とは言っても、お会いするのは10年以上ぶりですがね」
「そうかそうか。まあコンセプトは君に伝えてあったがTAMAKI君を目の前にするとよりイメージが沸くだろう。あとは君に任せるよ」
社長は愛想を振りまきながら他会社の重役たちの中へ入っていく。
「お久しぶり」
「本当に久しぶりだね。そうだ紹介するよ、今、チームに加わってくれている清水涼介君」
「清水涼介です。お美しい環さんにお会いできて光栄です。よろしく」
「よろしく」
爽やかに笑顔を見せる涼介とは対照的ににこりともしない環は差し出された手にも無視をする。
「馴れ馴れしかったですかね。失礼」
さっと手を涼介は引いた。後ろの方で自由にパーティを愉しむ女子社員たちが着飾った様子で涼介の様子をうかがっている。
彼女たちは涼介が今フリーであることを知っており、あわよくばと狙っているのだ。薫樹と違い気さくな涼介はそんな女子社員たちに愛想よく振舞う。
「じゃ、兵部さん、僕も楽しんできます」
「ああ」
涼介はこちらをチラチラ見ている女子社員数名の中に紛れ込んでいった。軽く黄色い歓声が上がっている。