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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第17章 3 羅袖 香を動すも 香已まず
木の陰ですんなりとした肢体の環を、薫樹は上から下まで一瞥し、彼女の首筋に鼻先を添わせ、やがて胸元、二の腕、から指先までたどる。
「素晴らしいな。これは名香中の名香だ。彼はどうしてこれを商品化しなかったのだろう。このパフュームを発表すればまたトップに躍り出でただろうに」
「そんなにいいの? 実は未完成だったの。私が着けて初めてこの香りになるのよ。ベースはこちら」
環はゴールドのパーティバッグから小さなアトマイザーを取り出す。
「嗅いでもいいかな」
「ええ」
薫樹はスーツの中から手帳を取り出して白紙の部分を少し破り取り、環の香水をかけた。そしてゆっくりと鼻先に近づける。
「ふーむ。このままでも素晴らしいが、確かに、何か足りない。君の体臭と混じることで完成度が高くなっているようだ」
「ジャンは楊貴妃の香りを再現したかったみたいよ」
「なるほど。ジャンも君のイメージを小野小町でなく楊貴妃ととらえたわけだ」
濃厚でセクシーな名香を前に薫樹は興味を隠せない。
「もっと近くで嗅いでもいいわよ」
「素晴らしいな。これは名香中の名香だ。彼はどうしてこれを商品化しなかったのだろう。このパフュームを発表すればまたトップに躍り出でただろうに」
「そんなにいいの? 実は未完成だったの。私が着けて初めてこの香りになるのよ。ベースはこちら」
環はゴールドのパーティバッグから小さなアトマイザーを取り出す。
「嗅いでもいいかな」
「ええ」
薫樹はスーツの中から手帳を取り出して白紙の部分を少し破り取り、環の香水をかけた。そしてゆっくりと鼻先に近づける。
「ふーむ。このままでも素晴らしいが、確かに、何か足りない。君の体臭と混じることで完成度が高くなっているようだ」
「ジャンは楊貴妃の香りを再現したかったみたいよ」
「なるほど。ジャンも君のイメージを小野小町でなく楊貴妃ととらえたわけだ」
濃厚でセクシーな名香を前に薫樹は興味を隠せない。
「もっと近くで嗅いでもいいわよ」