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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第10章 2 フィトンチッドの効果
芳香が目覚めるとベッドは空っぽだったが森の香りが残っている。
「すっごいよく寝た気がする……」
初めて他人と朝まで眠った。昨夜は何もしないで寝ることに、複雑な思いをしばらくしていたが気づくと深い眠りに落ちていて、今、もう朝だ。
薄まり始めた薫樹の残り香を胸いっぱいに吸い込む。真菜が言っていた薫樹の残り香を女子社員が残さず嗅ぐ話を思い出し、芳香も真似る。
「いい匂いだなあ」
しかしこの香りは彼のプライベートの香りで芳香しか知らないと思うと、少しだけ恋人だという実感が沸く。薫樹は家を出る前には必ず自作の香料を身に着ける。
季節や天候によってつけるものが違うので、これが薫樹の香りと言ったものはない。この森の香りだけが彼の持つ香りなのだ。
芳香は四つん這いになり、薫樹が寝ていた辺りに鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。まるで犯人の匂いを追っている警察犬のようにくんくん嗅いでいるところへ薫樹がやってきた。
「おはよ。何してるんだ」
「はっ、あ、おはようございます。ちょ、ちょっとシーツがしわくちゃだなっ、なんて」
慌てて正座し適当に言い訳すると薫樹は微笑んで「そうか、気にしなくていい。お茶を淹れたから起きておいで」と去った。
「あー、やばかったー」
流石に匂いを嗅いでましたとは言えず、軽く寝具を直して起き出す。
伸びをすると身体中が軽く気持ちが良い。
彼の香りの効果のすごさに「自分の匂いの香水作ればいいのにな」と芳香は白いシーツを眺めて思った。
「すっごいよく寝た気がする……」
初めて他人と朝まで眠った。昨夜は何もしないで寝ることに、複雑な思いをしばらくしていたが気づくと深い眠りに落ちていて、今、もう朝だ。
薄まり始めた薫樹の残り香を胸いっぱいに吸い込む。真菜が言っていた薫樹の残り香を女子社員が残さず嗅ぐ話を思い出し、芳香も真似る。
「いい匂いだなあ」
しかしこの香りは彼のプライベートの香りで芳香しか知らないと思うと、少しだけ恋人だという実感が沸く。薫樹は家を出る前には必ず自作の香料を身に着ける。
季節や天候によってつけるものが違うので、これが薫樹の香りと言ったものはない。この森の香りだけが彼の持つ香りなのだ。
芳香は四つん這いになり、薫樹が寝ていた辺りに鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。まるで犯人の匂いを追っている警察犬のようにくんくん嗅いでいるところへ薫樹がやってきた。
「おはよ。何してるんだ」
「はっ、あ、おはようございます。ちょ、ちょっとシーツがしわくちゃだなっ、なんて」
慌てて正座し適当に言い訳すると薫樹は微笑んで「そうか、気にしなくていい。お茶を淹れたから起きておいで」と去った。
「あー、やばかったー」
流石に匂いを嗅いでましたとは言えず、軽く寝具を直して起き出す。
伸びをすると身体中が軽く気持ちが良い。
彼の香りの効果のすごさに「自分の匂いの香水作ればいいのにな」と芳香は白いシーツを眺めて思った。