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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第13章 5 デート
 このハーブ園で収穫されたハーブを使ったスパゲッティを注文する。香りが高いうえにカラフルな花弁も散らされ美しい。

「綺麗っ! 食べるのもったいないなあ」
 そういいながらも芳香はくるくるとフォークに麺を巻き付ける。

「美味しいーっ」
 トマトソースにオレガノとタイムが利いている。

「うむ、なかなか香りが高くていい。でも君の作ったパスタの方が美味しいかな」
「え? そうですか?」
「うん。なんとなく気持ちも満たされるものがある」
「そ、そういってもらえると、作り甲斐があります」

「今度、僕が作ってみようかな」
「えっ? 作るんですか? 作ったことあるんですか?」

「んー。子供の頃、学校の家庭科で確か僕は味噌汁を担当したことがあったな」
「へー。どうでした?」
「だしの香りが気に入らなくてやり直していたら、時間切れになって僕の班だけ味噌汁がなかったよ」
「ええっ!? だ、大丈夫だったんですか?」
「うん。僕の班の子らは僕以外女子で、理由を言うと『しょうがないよね』って理解を示してくれたよ。優しい子たちだったな」

「あ、はあ、なんか、そうですか……。今とあんまり変わらないんですね……」
「ん? そう?」
「え、あ、あの、香りにこだわるってところが」
「フフ、そうだね」

 子供のころからモテモテですねとは言わずに芳香は残りのパスタを平らげた。
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