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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第15章 第三部 ミント王子
週末に芳香は店長の小田耕作から商品にするには少し不格好なミントを大量にもらい、薫樹のマンションを訪れた。
「薫樹さん喜ぶかなあ」
ミントの香りを嗅ぎながら今日はまずモロッコミントティーを淹れようとエントランスの扉を開ける。
芳香は薫樹からいつでも来ていいということで鍵をもらっている。しかし遠慮深い彼女は結局、薫樹のいる週末にしか使わない。
「失礼します」
玄関に入ると、薫樹のシンプルな黒のビジネスシューズの隣に薄いグリーンのスニーカーがあった。
「ん? 薫樹さん、ランニングでも始めたのかな」
上がって少し廊下を歩きダイニングに近づくと話し声が聞こえる。
「あ、来客なのかな……。どうしよ……」
入るのを躊躇っていると、カチャリとドアが開き薫樹が芳香に気づく。
「やあ、待ってたよ。さあ、中へ」
「は、はい。お邪魔します」
頭を下げ、入って上げるとダイニングで背の高い男が立って何か作業をしている。後姿ではあるが見覚えがあった。
「み、ミント王子?」
「ん? ああ、芳香ちゃん、いらっしゃい」
明るい笑顔で涼介はまるで我が家のように芳香を出迎える。服装の会社の前で会ったときのスーツ姿とはまるで違い、薄いグリーンのパーカーに白いハーフパンツという軽装ぶりだ。
「こ、こんにちは……」
「清水君が美味しいモロッコミントティーをご馳走してくれるようなんだ」
「ああ、そうなんですかあ……」
「少し待ってて」
せっかく自分が振舞いたかったのにと思い、持ってきたミントに一瞥をくれ芳香は荷物をリビングの隅に置き、ソファーに腰かけた。
ふうっとため息をつき、すべすべしたヒノキのセンターテーブルを撫でて木の香りを嗅いでいると、清水涼介が「じゃ、そちらに持っていきますので」と作業を見ている薫樹にリビングに移動するように促した。
「薫樹さん喜ぶかなあ」
ミントの香りを嗅ぎながら今日はまずモロッコミントティーを淹れようとエントランスの扉を開ける。
芳香は薫樹からいつでも来ていいということで鍵をもらっている。しかし遠慮深い彼女は結局、薫樹のいる週末にしか使わない。
「失礼します」
玄関に入ると、薫樹のシンプルな黒のビジネスシューズの隣に薄いグリーンのスニーカーがあった。
「ん? 薫樹さん、ランニングでも始めたのかな」
上がって少し廊下を歩きダイニングに近づくと話し声が聞こえる。
「あ、来客なのかな……。どうしよ……」
入るのを躊躇っていると、カチャリとドアが開き薫樹が芳香に気づく。
「やあ、待ってたよ。さあ、中へ」
「は、はい。お邪魔します」
頭を下げ、入って上げるとダイニングで背の高い男が立って何か作業をしている。後姿ではあるが見覚えがあった。
「み、ミント王子?」
「ん? ああ、芳香ちゃん、いらっしゃい」
明るい笑顔で涼介はまるで我が家のように芳香を出迎える。服装の会社の前で会ったときのスーツ姿とはまるで違い、薄いグリーンのパーカーに白いハーフパンツという軽装ぶりだ。
「こ、こんにちは……」
「清水君が美味しいモロッコミントティーをご馳走してくれるようなんだ」
「ああ、そうなんですかあ……」
「少し待ってて」
せっかく自分が振舞いたかったのにと思い、持ってきたミントに一瞥をくれ芳香は荷物をリビングの隅に置き、ソファーに腰かけた。
ふうっとため息をつき、すべすべしたヒノキのセンターテーブルを撫でて木の香りを嗅いでいると、清水涼介が「じゃ、そちらに持っていきますので」と作業を見ている薫樹にリビングに移動するように促した。