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第1章 1

　と、思いながら辺りを見回すとまたもおかしなことに気付く。

　――人が居ないのだ。先程まであんなにごった返していたというのに、辺りには人っ子ひとり居らず水を打ったような静けさだった。

　――あ......これ。本当に駄目なやつだ！！　美鈴ちゃんを待ってる暇なんてない。そう私の本能が告げている。

｢――私っ......帰らなくちゃ｣
｢ええ、そうですね。御屋敷に......｣
｢っ！！｣

　相変わらずベタベタと私の手に触れてくる彼の手をひったくるように剥がし、私は駆け出す。

　常識的に分かる。こんな物の数分で人がいなくなるなんてありえない。ということは、多分彼がその状況を作り出したんだ。

　そんな常識ハズレな霊に着いてこられて溜まるものですか！　とにかく走るひたすら走る。そしてその末に――。

｢けほ......え......う｣

　ようやく家についた。

　普段全速力で長距離走ることがないから、どっと疲れてしまった。いや、短距離でもこんな状況なら疲れる。