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NAKED
第78章 夏の鰻
○雄は重箱の隅をつついて、最後の一粒まで飯を摘んで味わう。
冷めかけた吸い物の底に沈んだ肝吸い。肝というがほとんどが鰻の胃腸の部位で味などしやしない。

……こんな管の切れっぱしに、鋭気を養うほどの珍味たる贅があるというのだろうか……

タレのよく効いた飯粒のほうが余程、五臓六腑に染み渡った。
最後に残った壺漬けのひと欠片を、○雄は奥歯でボリボリと何度も噛み砕く。

……娑婆の風味とは、こういうことをいちいち考えることができるということなのだろうな……

○雄はタバコに火を点す。
チリンチリンと、軒下の風鈴が気流に舞って鳴いていた。
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