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第84章 墳丘

埋葬地の墳墓には、いつの頃に造られたか不明の石室があった。それなりの古代からこの地にある。

少年から受け取ったエンマコオロギの群れは薄暗い石室に待機していた。その群れの数は、ゆうに一万匹を超える。

棺のてっぺんのくり貫き部分に漏斗を取り付ける。
漏斗から棺の中へ、その群れを流し込む。
コオロギは蟻地獄に落ちるように、スルスルと滑ってガラスケースの内部へ収容されていく。
コオロギの脚はツルツルした垂直のガラス面を登ることができない。ひとたびケースに落ちたコオロギが、くり貫き穴から逃げることはもうない。

コオロギが窒息しないように、男はガラスケースの中を森の爽やかな空気に入れ替えていたのであった。