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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
蘇州刺繍で彩られたブラウスをさらりと脱がせると、暁蕾は身を竦めた。
男の視線から透き通るように白い乳房を隠すように、両手を交差させる。
その仕草に、男慣れしていない初心さが透けて見えた。

「…セックスは…初めて?」
一瞬、その瞳がぎこちなく動き…首を振る。
「…ううん。初めてではないわ…。
でも、一人だけ…。
…日本に留学していたとき…」
語ろうとするその珊瑚色の唇に、素早く指を押し当てた。

「その話は、今度じっくり聞こう。
今は…」
…理不尽に嫉妬しそうだからね…大人気なく…と、笑いかける。
暁蕾は泣きそうに微笑んだ。

「…貴方が好き…。
自分でも、信じられないくらいに…」
いじらしくも熱い言葉に、堪らずにキスを返す。
「…俺の方が多分、ずっと好きだよ…」

…澄佳に良く似た美貌が、煌めくように微笑った。
けれどもう、そのことを切なく思うことはなかった。
暁蕾は、ほかの誰でもない。
…ここにいる、暁蕾だけなのだ。
そして、俺に恋する喜びを再び教えてくれたのは、暁蕾だ。

…俺は暁蕾を…
その先を言葉にすることは、できなかった。
当てはまるべき言葉が直ぐには見つからなかった。
…いや…。
見つけ出し、言葉にするのが怖かった。

…その代わりに、狂おしくも愛おしい口づけを繰り返す。
暁蕾を食べ尽くしてしまうほどの深く熱い口づけを…。

片岡は暁蕾の華奢な身体に己れの身体をゆっくりと重ねていった。


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