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蘇州の夜啼鳥
第1章 ランタンの月
「…ちょっと…!仕事って…私は観光ガイドなんですよ!
なんでこんなドレス着なきゃならないのよ!」
チャイナドレス専門店の試着室で、暁蕾はじたばたと暴れ出した。
「知ってる」
店内に飾られた色鮮やかなチャイナドレスを片岡は興味深げに眺める。
「お土産に買うのかと思ったから連れてきたのに!
嘘つき!」
試着室から怒鳴り声が聞こえる。
…案外じゃじゃ馬だな。
片岡は苦笑する。
「生憎こんな色っぽいドレスを土産に渡す女はいないんだ。
俺は男やもめだよ」
「やもめ?何それ」
「寂しい独身シングルって意味だ」
「やもめだかかもめだか知ったこっちゃないわよ!詐欺師!」
「お嬢さん、大人しく着て!」
介助していた店のマダムが業を煮やしたように叫んだ。
「せっかく旦那様がプレゼントしてくださるって言うんだから、大人しく着なさい!
これ、最高級のシルクよ?」
「旦那様じゃないってば。ただのお客よ!」
…中国語で何やら言い争う声が聞こえたが、あとはあの海千山千の女主人がなんとかしてくれるだろう。
片岡は店のソファに座り、煙草に火を点けた。
「マダム。頼んだよ」
「もちろんでございます。
こちらのお嬢様を、楊貴妃のようにあでやかにお美しく仕上げて差し上げますわ。
お任せくださいませ」
つるりとした皺一つない肌の年齢不詳の店の女主人は、試着室から貌を覗かせるとにんまりと笑ってみせた。
なんでこんなドレス着なきゃならないのよ!」
チャイナドレス専門店の試着室で、暁蕾はじたばたと暴れ出した。
「知ってる」
店内に飾られた色鮮やかなチャイナドレスを片岡は興味深げに眺める。
「お土産に買うのかと思ったから連れてきたのに!
嘘つき!」
試着室から怒鳴り声が聞こえる。
…案外じゃじゃ馬だな。
片岡は苦笑する。
「生憎こんな色っぽいドレスを土産に渡す女はいないんだ。
俺は男やもめだよ」
「やもめ?何それ」
「寂しい独身シングルって意味だ」
「やもめだかかもめだか知ったこっちゃないわよ!詐欺師!」
「お嬢さん、大人しく着て!」
介助していた店のマダムが業を煮やしたように叫んだ。
「せっかく旦那様がプレゼントしてくださるって言うんだから、大人しく着なさい!
これ、最高級のシルクよ?」
「旦那様じゃないってば。ただのお客よ!」
…中国語で何やら言い争う声が聞こえたが、あとはあの海千山千の女主人がなんとかしてくれるだろう。
片岡は店のソファに座り、煙草に火を点けた。
「マダム。頼んだよ」
「もちろんでございます。
こちらのお嬢様を、楊貴妃のようにあでやかにお美しく仕上げて差し上げますわ。
お任せくださいませ」
つるりとした皺一つない肌の年齢不詳の店の女主人は、試着室から貌を覗かせるとにんまりと笑ってみせた。