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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
まだ先代、つまり清五郎の父清治が生きていた頃は、ついぞこんなことはなかった。清五郎は見かけどおりの穏和な、常に取り乱すことのない男だった。それが、今ではこの体たらくだ。
清五郎が最初に感情を爆発させたのは、父が亡くなり、十八で店の身代を継いだ直後である。当時、娶ったばかりの女房と些細なことで喧嘩して、カッとなった清五郎が女房を殴った。それも一度だけでなく、何度も殴った。女房が怯えて頭を抱えて蹲って許しを乞うているにも拘わらず、なお拳を振り上げた。あの時、大番頭の佐兵衛が止めていなければ、清五郎は女房を殴り殺していたかもしれない。
清五郎が最初に感情を爆発させたのは、父が亡くなり、十八で店の身代を継いだ直後である。当時、娶ったばかりの女房と些細なことで喧嘩して、カッとなった清五郎が女房を殴った。それも一度だけでなく、何度も殴った。女房が怯えて頭を抱えて蹲って許しを乞うているにも拘わらず、なお拳を振り上げた。あの時、大番頭の佐兵衛が止めていなければ、清五郎は女房を殴り殺していたかもしれない。