この作品は18歳未満閲覧禁止です
この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
「それは―、いやだわ」
ゆっくりと眼を開くと、口ごもりながらも、はっきりと応える。
「なら、逃げましょう。このままでは、お内儀さんは遅かれ早かれ、旦那さまの意のままにならねばならなくなりますよ。迷っている時間はありません。二つに一つ、どちらかを選ぶだけのことです」
平坦な声だった。しかし、不思議と深みがあり、相手の心の奥底まで滲み入るような響きがある。この男は声さえも人を魅了するようだ。