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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
危ういところを逃げ出したお逸は事なきを得たのだが、客は相当な立腹のようで、とりあえずは若い衆が駕籠を呼んで男の家まで送り届け、鍼医者を呼ぶことになった。幸いにもたいした怪我ではなく、治療にかかった費用はすべて花乃屋がもつということで話のかたはついたという。
「まア、悪いといやア、いきなり素人女に手を出そうとした客の方が悪いのは判ってはいることだけどね。全く、無粋にも程があるってえんだ。女郎だって、そんな風にいきなり押し倒されちまったんじゃア、その気にもなれやしない。ましてや、おぼこな素人娘に無体な真似をするなんざァ、あたしも長年ここでやり手をしてきたけど、そんな不心得者の客はいなかったよ」
「まア、悪いといやア、いきなり素人女に手を出そうとした客の方が悪いのは判ってはいることだけどね。全く、無粋にも程があるってえんだ。女郎だって、そんな風にいきなり押し倒されちまったんじゃア、その気にもなれやしない。ましてや、おぼこな素人娘に無体な真似をするなんざァ、あたしも長年ここでやり手をしてきたけど、そんな不心得者の客はいなかったよ」