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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
お逸自身、そこまですれば―故意に醜くしていれば、遊廓でも目立たず済むと安心し切っていたのだが、それでも、お逸に眼を付ける男が存在したのだ。清五郎の毒牙を免れ真吉と二人でやっと辿り着いた場所、それが吉原だったのだ。だが、やはり、どこまで逃げても、逃れ得ぬ自分の宿命なのだろうか。
つい一刻ほど前のことを思い出して、お逸は身を震わせる。欲望に濁った眼でお逸を眺め、嫌がるお逸を我が物にしようとした男。あの男の眼や醜く歪んだ顔には見憶えがある。そう、伊勢屋清五郎がある夜、突然、豹変したときのことだ。
つい一刻ほど前のことを思い出して、お逸は身を震わせる。欲望に濁った眼でお逸を眺め、嫌がるお逸を我が物にしようとした男。あの男の眼や醜く歪んだ顔には見憶えがある。そう、伊勢屋清五郎がある夜、突然、豹変したときのことだ。