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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
あれから四月、この花乃屋で二人は懸命に生きようとしていた。お逸は下女として一階の下女部屋で寝起きし、真吉は別棟の男たちの起居する部屋で暮らしている。真吉は若い衆の副領格として早くもここでの暮らしに馴染んでいるようであった。元々、大人しく口数も少ない男であった。かといって無愛想というわけでもなく、嫌みのない人柄で誰からも好感を持たれる。
よく気は付くし、なかなかの男ぶりで腕も立つとなれば、花乃屋の女郎たちもすぐに〝真さん〟と真吉に熱い視線を向けるようになった。殊に花乃屋の稼ぎ頭の花魁の一人東雲が真吉に夢中だという噂は、下女部屋にまで流れてきた。
よく気は付くし、なかなかの男ぶりで腕も立つとなれば、花乃屋の女郎たちもすぐに〝真さん〟と真吉に熱い視線を向けるようになった。殊に花乃屋の稼ぎ頭の花魁の一人東雲が真吉に夢中だという噂は、下女部屋にまで流れてきた。