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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
廓暮らしが嫌というわけではない。下女の仕事は辛いが、仲間は優しいし、夜毎下女部屋で繰り広げられる賑やかな話も、これまで同年代の友達がいなかったお逸には新鮮で愉しかった。お逸という娘は、そういう娘なのだ。たとえ、その場所がどこであろうと、ひとたび根を下ろした場所で自分なりに懸命に生きてゆこうとする。どんなに辛い暮らしの中でもささやかな愉しみや生き甲斐を見つけようとする。
もし、あのまま伊勢屋に居続ければ、お逸は既に清五郎のものになっていただろう。夜毎、清五郎と褥を共にしなければならないことを考えれば、今の暮らしは、はるかに良い。
もし、あのまま伊勢屋に居続ければ、お逸は既に清五郎のものになっていただろう。夜毎、清五郎と褥を共にしなければならないことを考えれば、今の暮らしは、はるかに良い。