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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第6章 第二話【春の日】其の弐
「太夫、ご昼食をお持ちしました」
「あい、ご苦労でありんすね」
それまで書見をしていたらしい松風が物憂げにゆるゆると視線を動かす。このいかにもけだるげな挙措こそが色香がある―と、松風の馴染みにはたいそう評判が良い。おっとりとした物言いと大人しげな容貌も合わせて、万事がもう一人の花魁東雲とは対照的だ。
お逸が食事を花魁の前に運ぶ。そのまま頭を下げて出ていこうとするのを、背後から呼び止められた。