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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第6章 第二話【春の日】其の弐
どうでも初音を閨にと主張する隠居は、ついに強硬手段に出た。初音の手首を掴み、強引に別の部屋に連れてゆこうとしたのである。座敷は大騒ぎになった。三味線を弾く芸者衆や幇間は大わらわで、騒ぎを聞きつけた若い衆が駆けつけ隠居を押さえるに及んで、漸く騒動がおさまった。
―良い加減にしなせえ。仮にも名の知れた大店のご隠居が孫のような年若な娘を相手に、何を血迷うていなさる。ご隠居も廓遊びの達人なら、振袖新造に手を出すことは、たとえお大名でもできねえことは、よおくご存知じゃありやせんかい。
そう言って、落ち着き払った態度で隠居をいなしたのが信八であった。
―良い加減にしなせえ。仮にも名の知れた大店のご隠居が孫のような年若な娘を相手に、何を血迷うていなさる。ご隠居も廓遊びの達人なら、振袖新造に手を出すことは、たとえお大名でもできねえことは、よおくご存知じゃありやせんかい。
そう言って、落ち着き払った態度で隠居をいなしたのが信八であった。