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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第7章 第二話【春の日】其の参
「自分だけが幸せになるくせにって言われたら、そりゃア、あたしも黙るしかないね。ここを出る算段がついてるから、綺麗事が言えるんだって言われても、何も言えやしない。だけど、東雲さん。あの二人のことは、そっとしておいておやりよ。黙って見逃してやりな。それが互いに同じ廓の飯を食べる者同士の仁義ってもんだ。あの二人が相応の理由(わけ)ありだってことは、長年ここにいるあんたなら、もう薄々は察してるだろう? ああいう世間の眼から必死に逃げようとしてる連中は、どこか独特の翳があるからね。そんな二人をこれ以上追いつめて、どうするってえんだい」