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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第7章 第二話【春の日】其の参
「松風花魁がお前に用があるそうだ」
お逸は、朋輩のおさとに後を任せて、すぐに松風の部屋を訪ねた。この部屋で松風と二人だけで話をし、花魁の哀しい昔語りを聞いたのは、つい十日ほど前のことだった。
一体何事かとお逸がおっかなびっくり部屋に入ると、松風は眩しいほどの笑みを向けてきた。今までどこか淋しげで翳のあった美貌が、明るく輝いている。まさに、嫁ぐことが決まった女の歓びを表しているようにも見えた。