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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第9章 第三話 【白妙菊の約束】其の弐
その時、おしがはふと妙に思った。
松風はあの笄を滅多に使わなかった。花魁にまで上りつめて、初めて自分で買ったものゆえ、殊更、思い入れもあったのだろう。そんな大切な笄を果たして、白妙なぞに与えるだろうか―。
松風は妹女郎たちを区別することはなかったが、内心では、頭も良くないくせに、小狡くて人を出し抜くことばかり考えていた白妙を嫌っていたはずだ。そのことを、おしがはよく知っている。