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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第9章 第三話 【白妙菊の約束】其の弐
が、今、自分と対峙しているのは、甚佐と眼を合わせることにすら怯えていた、いかにも気弱そうな娘とは別人のようである。
「私には一切身に憶えのないことでございます。私は白妙さんの笄を盗んだりはしておりません。それに、旦那さま、あの笄は元々、松風花魁からこの私が名残にと頂いたものなのです。私自身、何ゆえ、花魁から頂いたあの笄が白妙さんのもので、それを私が盗んだということになっているのか皆目判らないのです」
すかさず口にした応えも要領を得たものだった。
「私には一切身に憶えのないことでございます。私は白妙さんの笄を盗んだりはしておりません。それに、旦那さま、あの笄は元々、松風花魁からこの私が名残にと頂いたものなのです。私自身、何ゆえ、花魁から頂いたあの笄が白妙さんのもので、それを私が盗んだということになっているのか皆目判らないのです」
すかさず口にした応えも要領を得たものだった。